トヨタbB TRDターボ(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタbB TRDターボ(4AT) 2004.07.01 試乗記 ……247万8000円 総合評価……★★★ 四角いボディに若者風味を満載した「トヨタbB」。「オジサンも座れる地べた」と『NAVI』誌で評されたモデルのチュンドカー、TRDによるターボバージョンはどうなのか? 別冊CG編集室の道田宣和が乗った。「bBターボ」はストレートキング
人間、思い込みというのは恐ろしい。そもそも業界のトップリーダーとして品行方正なクルマづくりをすることで知られる大トヨタがやんちゃな「bB」を世に問うたのも意外なら、そのbBをベースにターボで武装し、最初からローダウン仕様に仕立てたチューンドカーがあらわれたのも少々意表をつかれた思いだ。すくなくとも自動車雑誌づくりにかかわって四半世紀を超える筆者にはそう映った。もっともこのクルマ、開発したのはトヨタ本体ではなく、同社のモータースポーツ活動を一手に引き受けるトヨタテクノクラフト(TRD)なのだが、この種のクルマの場合、そのこと自体が商品の価値を高める有効なブランドとして作用するに違いない。
bBターボはノーマルの1.5リッター2WD「Z」(154万1400円)ないし「Z“X Version”」(170万9400円。テスト車はこれ)をベースにターボの装着で動力性能を大幅にアップ、その他独自のサスペンション・セッティングなどでひとクラス上の乗り味を狙ったものである。1NZ-FE型DOHCエンジンは1496ccの排気量と10.5の圧縮比はそのままに、コンプレッサー側軸受け部にボールベアリングを奢るなどTRDが独自開発したターボチャージャー+インタークーラーを装着、それぞれノーマル比38%アップ、39%アップの150ps/6400rpmのパワーと20.0kgm/4800rpmのトルクを獲得するに至った。ただし、使用燃料はノーマルのレギュラーからプレミアムへと指定変更になる。ベンチシートやコラムセレクトの4ATなど、パンクでイージーなbBのキャラクター部分には敢えて手を付けず、代わりに後述のとおりサスペンションを強化、ブレーキもTRDオリジナルのパッド(フロントのみ)に換装している。
筆者にとっての「思い込み」はもうひとつあった。それはbBというクルマそのものについてだ。若者向けのクルマに五十男は不似合いと思ってか、これまで(社内の)どの媒体からも執筆依頼を受けたことがなく、実は今回がウレシハズカシ、初体験なのである。実際、『webCG』担当者からキーを渡され、パーキングメーターで主を待つテスト車を一目見た途端、そのあまりにも「今風」な佇まいに思わず退散するところであった。ところがこのbB、いざ乗ってみると昔のクルマのようにウィンドシールドが立っていて圧迫感がすくないなど、オジサンにも意外に優しいクルマであった。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「bB TRDターボ」は「トヨタbB」をベースに、トヨタテクノクラフト株式会社(TRD)が製造した部品を使用して、以下のbB TRDターボ取り扱い店が改造した車両。袈装店を限定するのは「TRD自身が理想とするクルマとしてのクォリティを実現・維持するため」で、具体的には全国で9店舗がリストアップされている。神奈川トヨタ「マスターワン」、愛知トヨタ「ツインカムX'Pit」、ネッツトヨタ仙台「日の出店G-WORKS」、ネッツトヨタ群馬「ジースパイス」、ネッツトヨタ千葉「ネッツシュポルト」、ネッツトヨタ兵庫「ハーバーランド店」、ネッツトヨタ岡山「NVC倉敷」、TRDダイレクトショップ多摩、トヨタテクノクラフト芝浦工場がそれだ。
通常のライン生産車と機能的に異なるチューンドカーが車検上どう扱われるかは大いなる関心事だが、そこは天下のトヨタ・グループ、以下のいずれのケースでも問題がないことが確認されている。いわゆる「車体本体製造事業者」はトヨタだが、「袈装装備製造元」はトヨタテクノクラフト株式会社(TRD)であり、袈装作業そのものは上記「bB TRDターボ取り扱い店」が行う。その装着作業は新車登録時に行う方法と一旦登録後に後付けする方法のふた通りがあり、前者の場合は“持ち込み”車検となるが、後者では次回車検時に排ガス規制値をパスする必要があるものの、当面は改造申請が不要である。
(グレード概要)
「TRDターボ」のキモはいうまでもなくターボチャージャー・ユニットおよび関連パーツ類の装着そのものだが、チューンドカーのコンセプト全体からするとパワーアップに見合った足まわりの強化が当然推奨されており、それらをパッケージで組み込んだのがテスト車の“トータルチューニング・コンプリートカー”というわけである。
ただし、望めばユニット/パーツごとの購入/装着も可能で、その場合の価格は以下のようになる。TRDターボキット:62万7900円(タービン本体+大容量インジェクター4本+大容量フューエルポンプ+インタークーラー+オイルクーラー+インタークーラーダクト+専用ECU+シリアルナンバープレートほか/以上取り付け工賃込み)、ハイレスポンスマフラーVer.S:6万1950円、スポーツエアフィルター:8610円、“WayDo Sportivo”ダンパーセット:5万6700円(フロント=1343-598N/0.3m/s時+リア=1039-294N/0.3m/s時)、“WayDo Sportivo”スプリングセット:3万7800円(フロント=26.5N/mm+リア=28.5N/mm)、“TRD Sports T3”アルミホイール:5万1450円/本(7J×16/オフセット33mm/1ピース鍛造/ブロンズカラー)、ホイールナットセット:3885円。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ドライバーズシートに座ってみて、なるほどこういうクルマだったのかと思わず唸ってしまった。現代のクルマとしてはウィンドスクリーンの角度が比較的立っており、しかもその立ち上がりポイントが遠くて心理的に楽なのである。強いて似たものを探せば、「MINI」や「ホンダS2000」に近い雰囲気だ。メーターはダッシュボード上面の中央寄りに丸く控えめなものがひとつだけ。いわゆる集合メーターだが、目的に対しては必要にして充分で、視界も遮らない。欲を言えばせっかくのターボなのだから、ブーストメーターでもあればそれなりの演出にはなるだろう。
デザインは全体にID(インダストリアル・デザイン)的。その言葉自体が今の若者にとっては一種の“レトロ”かもしれないが、センターコンソールの“縦”とシェルフの“横”が交錯する明快なデザインは見た目に快いだけでなく、使い勝手も上々である。空調コントロール下部のカップホルダーカバーには“タギング”風のロゴマークで“bB”の文字が大書され、それがブルーの透過照明で浮かび上がる。このへんの感覚がいかにも若者向けのbBらしいところだ。
(前席)……★★★★
ベースがZ“X Version”ということで、シート地はざっくりと荒い木綿のような感触を持つファブリックが使われる。左右2脚のクッションが大型で互いに接近し、中央に配したアームレストを上方に収納するとベンチ式になるフロントシートは特にホールド性を追求したものではないにもかかわらず、素材のせいかどことなくふっかりと包み込んでくれるような感触があり、悪くない。これまた若者好みのラウンジカフェのような趣だ。
(後席)……★★★★
高い天井とスクエアなボディ断面とで後席のスペースは想像以上と言えた。ショルダールームの余裕が圧倒的なのである。こちらは左右のクッションがはじめから一体化した完全なベンチシートだが、これにもスライド機構が備わっており、前方にセットした時には標準的なレッグルームが、後方にセットした場合はクラスの常識を覆すほどの広大なレッグルームが出現する。ただし、座り心地そのものは薄めのクッションや直立気味の着座姿勢がやや気になるほか、後述の乗り心地の点でもこのクルマならではの硬さがモロに伝わってきて、前席には及ばない。
(荷室)……★★★
リアシートの位置にもよるが、まずまずといったところ。シートを前方に追いやればすくなくとも同クラスのセダン以上の容量は確実に確保できる。アクセサリーカタログには“ラゲージラック”がオプションで用意されているが、標準状態では、荷室に対して一切の目隠しがないのが、少々気になる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
さて注目のエンジンだが、ターボというとただでさえ過激なイメージがつきまといがちで、ましてチューンドカーとなると相当に尖ったものを想像しがちだが、これが思いのほかジェントルなのだ。車重は40kg増えただけ(ノーマルの1070kgに対して1110kg)なので格段に速くなったのは間違いないが、それがスロットルを踏みさえすればいつでもどこでもストレスなしに発揮されるのが好印象に結びついている。おそらくはパワー以上に改善代が大きいトルクの増強とオートマチックとの相乗効果がなせるわざに違いない。なかでも3000rpm台後半からがパワフルだ。タービンノイズはごく控えめで、すくなくとも室内でそれとはっきり分かるのは40km/h前後のタウンスピードでだけ。高速道路では80km/hを越すとエンジン本体その他のノイズに掻き消されてしまうほどだ。ついでに言えば、ウィンドシールドが直立している割には風切り音も低く、それを特に意識させられる場面はまったくといってよいほどなかった。
けれども、次のハンドリングに関しても同様だが、このターボカー、どちらかと言えば直線が得意で、箱根のようなワインディングロードはやや苦手である。というより、そもそもbB自体がそういう種類のクルマではないと言う方が正確だ。やはりコラムセレクトなるがゆえの素早いチェンジのしにくさとスポーツカーのようには完璧に身体を支えないシート、そしてコーナー立ち上がりのフルスロットルで若干顔を出すタイムラグとが、本来のポテンシャルを100%活かしきれないのである。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
すでに述べたとおり前席と後席で違いは認められるものの、すくなくともドライバーズシートに座っているかぎり、軽量なコンパクトカーにこれだけのハードサスを組み込んでなお直接的なショックを抑え込んでいるのには正直言って感心した。乗り心地が絶対的に硬いのはたしかだが、身体にズシンと響くような荒さは断たれているのである。軽量なのにどことなく重量車のような落ち着きも感じられる。
ステアリングにも同じことがいえそうだ。ロープロファイルのワイドタイヤを履いているにもかかわらず、キックバックが巧妙に遮断され、全体にフィールがしっかりしていて信頼が置けるのである。とりあえず過大な入力に対するボディや足まわりの容量は大きいと見たが、軽量なだけに走行距離が進んでも果たしてそれがいつまで同じように維持されるかが問題だ。ストレートでちょうど良かったステアリングもワインディングロードでは一転してかなりスローで忙しくなる。タイヤのグリップがはるかに向上したせいでフロント、リアとも横方向の姿勢変化はすくないが、ロールはシートのせいか実際より多少大きく感じられた。この日はペースが速かったせいでブレーキが最後にはフェードの兆しを見せたものの、全体としては安定していた。
(写真=峰昌宏/2004年6月)
【テストデータ】
報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年5月17日〜5月20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:6088km
タイヤ:(前)205/50R16 87V(後)同じ(グッドイヤーREV SPEC RS-2)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(4):高速道路(5)山岳路(1)
テスト距離:396.7km
使用燃料:39.0リッター
参考燃費:10.1km/リッター

道田 宣和
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