車・冷暖房100%電化、営農型太陽光に期待…再エネ社会に転換する「夢ではない」ビジョン
プラチナ構想ネットワーク(小宮山宏会長=三菱総合研究所理事長)は、2050年に再生可能エネルギー主体の社会に転換させるビジョンを公表した。化石燃料を使う機器を電気機器に置き換える「電化」の徹底、耕作放棄地への太陽光発電の導入、さらに太陽光パネルの国産化も掲げた。小宮山会長は「すべて現状の技術であり、ビジョンは決して夢ではない」と強調した。
プラチナ構想ネットワークは日本を「社会課題解決先進国」の“世界モデル”にする目標を掲げて活動する一般社団法人。東京大学総長を務めた小宮山氏が中心となって2010年に発足し、400以上の企業・自治体・個人が会員となっている。
「2050エネルギービジョン」は慶応義塾大学の島田晴雄名誉教授、東京電力パワーグリッドの岡本浩副社長、東京製鉄の奈良暢明社長など産学の有識者がメンバーとなって1年がかりでまとめた。議論に当たり化石燃料依存からの脱却、現在15%のエネルギー自給率の向上などを成果に設定。総エネルギー需要の80%以上を再生エネで賄う社会を設定し、そこから逆算するバックキャスティング手法によって算定した。また、現時点で実現が見込まれる技術を採用し、核融合は検討から外した。
算定した50年の電力需要は1兆9990億キロワット―2兆920億キロワット時。これは23年の2倍以上となる。化石燃料を使う給湯器や暖房、中低温度の蒸気製造はヒートポンプに置き換え、可能な限り電化する。乗用車も100%電気自動車(EV)化するなどで化石燃料の燃焼を減らす。
電力のほとんどは再生エネで供給する。太陽光は発電量7280億キロワット時を想定した。24年度実績の7・4倍だ。大規模太陽光発電所(メガソーラー)に代わり、農地と建物への設置を進める。現在の農地・草地・耕作放棄地の5%に導入するだけでも実現できるという。
特にコメや野菜を育てながら発電する営農型太陽光発電への期待が大きく、現状比250倍の25万ヘクタールに拡大する。農業経営の収益が高まるため他業種からも参入しやすくなり、国内の農業支援にもつながるからだ。
だが、農地での発電利用は最長10年に限られるなど規制が多い。そこでプラチナ構想ネットワークは参加者を募り、政府に規制緩和を求めるグループを結成することにした。
太陽光パネルは国産化と政府による買い取りを提言した。現在、国内に導入する太陽光パネルは輸入に依存している。ビジョンの実現を目指すと国内に大きな需要が創出されるため、企業はリスクを抑えて国内生産に乗り出せる。
風力は6400億キロワット時と、太陽光に次ぐ規模を想定。24年度の54倍であり、洋上風力発電が実現のカギを握る。海上での建設工事の拠点となる港湾を公設民営で整備・運営する方式を提案し、風力発電でも国産メーカーの育成を掲げた。
「上げデマンドレスポンス(DR、需要応答)」も詳細に検討した。上げDRとは、太陽光と風力発電の発電量が増加し、余剰電力が発生するタイミングに合わせ工場などで電力を使う需給調整だ。
現状は再生エネ設備からの供給を停止する出力抑制によって余剰電力の発生を防いでいる。上げDRが機能すれば出力抑制を減らし、再生エネの供給を増やせる。すでに東京製鉄は増産によって電力消費量を増やし、余剰電力の解消に協力している。同社の奈良社長は「需要家が大きなポテンシャルを持っている」と強調した。
これまでも自然エネルギー財団や地球環境戦略研究機関など、さまざまな機関が40年や50年に再生エネが主体となるビジョンを提案してきた。エネルギーの専門家だけでなく、経営者も加えて議論したプラチナ構想ネットワークのビジョンは実現可能なのか。今後、市民や産業界、大学生にビジョンへの合意形成を得る活動を展開するという。そして「(電源構成を検討する)次期エネルギー基本計画に提供したい」(小宮山会長)と意気込む。