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正念場の再生可能エネルギー、どのように導入を加速すべきか

正念場の再生可能エネルギー、どのように導入を加速すべきか

自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエル前理事長(左)と、米シンクタンクのRMI(旧ロッキーマウンテン研究所)のエイモリー・B・ロビンス共同設立者

日本の再生可能エネルギー政策が正念場を迎えた。2024年度までに発電の23%を占めるまで再生エネが増加したが、中東情勢によって政策が揺れている。日本はどのように再生エネ導入を加速させるべきなのか。日本政府への政策提言を続ける自然エネルギー財団(東京都港区)のトーマス・コーベリエル前理事長と、各国の政府や企業にエネルギー政策を助言する米シンクタンクのRMI(旧ロッキーマウンテン研究所)のエイモリー・B・ロビンス共同設立者に聞いた。(編集委員・松木喬)

自然エネルギー財団前理事長のトーマス・コーベリエル氏 北海道の風力に将来性

―12年の固定価格買い取り制度(FIT)開始後、再生エネの導入が拡大しました。どう評価しますか。
 「太陽光発電の導入が進んだ。一方で手続きが多く、いつ発電事業を始められるのか予測が難しい課題がある。また、再生エネについて間違った情報が流れても政府は正すことをしてこなかった」

―確かに再生エネのマイナス面ばかり主張されることがあります。
 「科学者が正しい情報をもっと発信するべきだ。政治家や政策当局は、偽情報を伝える側に立つべきではない。それに化石燃料を輸入に頼る日本にとって、エネルギー自給率を高める再生エネが重要だ。中東情勢が緊迫化し、他国よりも緊急性がある。紛争が長期化する可能性があり、化石燃料に依存したエネルギーシステムを変革しないといけない」

―再生エネ導入を加速させるため、自然エネルギー財団は建物や農地への太陽光パネルの設置、洋上風力発電の推進を提言しています。
 「賛同する。ただ、過小評価されているのが陸上風力だ。北海道には大きなポテンシャルがある。水力と風力発電が普及して電力料金が下がった北欧のようになれば、北海道への進出企業が増える。課題は発電した電力を届ける系統容量の不足だ」

―系統問題は長年指摘されています。
 「政府は重要な役割を果たせる。電力会社に個別に投資を決定させるのではなく、国益として投資を決めるべきだ。また、海底ケーブルも有効だ。日本には海底ケーブルの優れた技術を持つ企業が存在する」

―米国が気候変動政策を大転換し、日本企業もダメージを受けています。
 「欧州、韓国、豪州、そして日本などが結束し、貿易や産業、科学での協力を増やしていく必要がある。米国だけが競争相手はない。経済力や技術力で中国の存在感が大きい。ただし、中国を敵ではなく公平な競争相手として付き合うべきだ。日本企業は良く分かっていると思う」

【記者の目/安定供給で産業強化】
 コーベリエル前理事長は、インタビュー中、電力会社と企業が利害を一致させる必要があるとも指摘した。本来、電力を多く売りたい電力会社と、安く使いたい企業とは利害が反する。再生エネを増やし、安定した価格で電力を届けることは産業競争力強化につながるため、利害を一致させる目的の一つになるだろう。

米RMI共同設立者のエイモリー・B・ロビンス氏 省エネ設計の教育強化

―米国では電気自動車(EV)の生産計画が相次いで中止や延期されています。米国のエネルギー転換は停滞していますか。
 「米国でEVの販売台数が増え、ほとんどの車種のコストが下がっている。連邦政府によって多くのクリーンエネルギー事業が中止や延期に追い込まれたが、産業として強くなっている。企業は早い進化を求められるプレッシャーにさらされているからだ」

―米国は再生エネの導入量も増えています。
 「連邦政府よりも州のエネルギー政策が強い。テキサス州は共和党の地盤だが、再生エネのリーダー的な地域だ。環境や気候変動に強い関心がある州ではないが、利益につながるから再生エネを受け入れている。他の州も同じだ。安全保障や強靱(きょうじん)性、繁栄につながるから再生エネを選び、結果的に気候変動対策になっている」

―日本で再生エネの導入を加速させるには。
 「エネルギーの種類や技術、所有者に関係なく、公平に競争できる環境をつくることだ。私の専門は技術を選び、最適なシステムを設計すること。大幅な省エネのために、プラントや建築物の設計者がシステム全体を考えられるように教育する必要がある。エネルギー効率が悪いと国として繁栄できない。日本は多くのチャンスを逃している」

―日本でも建築物省エネ法が強化されました。
 「詳しくは分からないが、日本はもっと良い規制にできるだろう。一番、良い手法を使えば、改修によって建物のエネルギー消費をゼロにできるはずだ」

―化石燃料代替として水素の可能性は。
 「電池の性能が向上し、水素トラックや水素自動車への期待が後退した。液体水素を使った航空機も有望視されたが、今は機体の軽量化とモーターの進化があり、電動航空機に可能性が出てきた。日本は水素を使った製鉄技術を進化させている点は大きい。ただし、自動車の車体にも革新的な材料が使われる可能性がある」

【記者の目/世界水準技術に対応】
 標高2000メートルの寒冷地でありながら、暖房を使わずにバナナを栽培するハウスを紹介してもらった。太陽光の熱をフル活用する建築手法だという。わずかなエネルギーで大きな水流を起こすファンもあった。世界でエネルギー効率をめぐる技術革新が進んでおり、日本は乗り遅れていないのか不安になった。

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日刊工業新聞 2026年05月01日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
自然エネルギー財団の活動のおかげで、多くの知識を得ることができるようになりました。2016年の孫正義さんの講演が忘れられません。ソフトバンクの社長を辞めてまで自然エネルギーの普及に取り組む決意をし、財団を立ち上げた思いを語り、「地球のどこかで常に太陽は輝いている。常に風は吹いている。常に水は流れている。50年のうちに、地球上のエネルギーの100%が自然エネルギーでつながっていると信じている」と語っていました。

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