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Jリーグクラブも…年800件以上増加中、「営農型太陽光」が秘める成長力

Jリーグクラブも…年800件以上増加中、「営農型太陽光」が秘める成長力

キクラゲを生産するリビタスの農場。太陽光パネルが強い日光を遮る

再生エネ普及の推進役

農業と発電を両立させる営農型太陽光発電所(ソーラーシェアリング)が年800件前後のペースで増えてきた。農地の5%をソーラーシェアリングに活用すると再生可能エネルギーの主力電源化に貢献できるという試算もあり、成長力を秘める。ソーラーシェアリングを始めるきっかけも農業振興や教育への貢献とさまざまで、サッカー・Jリーグのクラブも地域課題解決というゴールに挑む。(編集委員・松木喬)

大型ソーラーシェアリングが次々と登場している。4月上旬、宮城県美里町で稲作としては最大となる発電容量2474キロワットのソーラーシェアリングが稼働した。農業法人の舞台ファーム(仙台市若林区)が設置し、発電した電気は植物工場と電気自動車の充電に利用する。2月には出光興産が徳島県小松島市の水田で太陽光発電を稼働させた。こちらも約2000キロワットと大規模だ。

ソーラーシェアリングは農地に支柱を立て、その上に太陽光パネルを固定する方法が一般的。発電した電気の利用や売電収入によって農業経営の安定化が期待できる。農林水産省によると2023年度時点で累計6137件の農地が発電の許可を得た。5年前の18年度の3倍であり、20年度から年800―1000件のペースで増えている。

メガソーラー(大規模太陽光発電所)に代わる再生エネ普及の推進役としても期待が高まる。シンクタンクのプラチナ構想ネットワーク(東京都千代田区、小宮山宏会長=三菱総合研究所理事長)は2月、50年に日本の総電力需要の8割を再生エネで賄えるとするビジョンを公表した。主軸となる太陽光の発電量は24年度実績の7・4倍に増やすとしている。農地の5%(25万ヘクタール)を太陽光発電に活用するだけでも実現可能だという。

同ネットワークは、政府にソーラーシェアリングをめぐる規制緩和を訴えるグループを結成した。農地は農業以外の利用が制限されており、ソーラーシェアリングは収量を地域平均の20%以上減少させないなどの要件がある。また最長10年しか発電が認められない。

一方で農水省は4月23日、規制を強化する案を公表した。収量の減少や売電目的での農地利用が起きているためだ。日当たりを確保するため遮光率を30%未満に抑えるなどの基準に加える方針だ。

リビタス、キクラゲ栽培

農業法人のリビタス(兵庫県加古川市)は太陽光パネルの下でキクラゲを栽培する。キクラゲは強い日光が苦手なので、太陽光パネルが日差しよけになってくれる。

同社のキクラゲ栽培は4年目に入った。沢野晋弥代表はブドウを生産していたが、近隣ではブドウ農家が減っていた。「何とかしたい」と悩んでいると、農業法人の佐々木(広島県東広島市)の江口康人社長からキクラゲ栽培を教えてもらった。キクラゲは、UMAMI UNITED JAPAN(東京都渋谷区)の加工技術によって植物性代替卵の原料となる。

代替卵なら卵アレルギーがあっても食べられる。沢野代表は京都府福知山市の小学生140人に代替卵を使ったマフィンを提供するイベントを開いた。「卵入りのお菓子を食べられない子どもも、みんなと同じおやつを食べられて幸せそうだった」(沢野代表)と目を細める。

佐々木の江口社長は「30年、40年続く農業をやりたい」とキクラゲを選んだ。国内で流通するキクラゲの9割は輸入品。「国産キクラゲの価格を抑える狙いで、太陽光発電をしている」と話す。研究機関とは代替卵以外の用途開発も研究中だ。

小学生にソーラーシェアリングについて授業をするリビタスの沢野代表(京都府福知山市内)

沢野代表は「継続できる農業」に共感したという。リビタスのソーラーシェアリングは兵庫県と京都府に合計8カ所、2万8500平方メートル、発電容量2900キロワットと広がった。同社は太陽光パネルを設置する企業を募ってソーラーシェアリングを拡大している。

企業は発電した電気を購入しながら、農業の活性化や子どもの安全な食事に貢献できる。同社は中小企業が再生エネを推進する団体「再エネ100宣言アールイーアクション協議会」に加盟した。

耕作放棄地再生を収益化、地域課題解決に挑む

サッカー・Jリーグの水戸ホーリーホックは茨城県城里町で耕作放棄地を借り、25年からソーラーシェアリングを始めた。

きっかけの一つは小学生との出会いだった。その小学生は21年、Jリーグの環境活動を知りたいと全クラブにメールを送った。水戸ホーリーホックのスタッフが返信すると小学生から大豆ミートで作ったハンバーガーの製造・販売を提案され、実現させた。23年には、その活動がJリーグから表彰された。するとJリーグ幹部からソーラーシェアリングを勧められた。

水戸ホーリーホックのソーラーシェアリング。耕作放棄地を借りて25年にスタートした

当時、地元の人を集めてクラブへの期待を聞くと耕作放棄地の増加や経済の衰退、人間関係の希薄化が地域課題として浮かび上がった。水戸ホーリーホックの瀬田元吾取締役は「解決策を示せると我々の価値になるはず。耕作放棄地再生をマネタイズ(収益化)できるスキームにする」とし、ソーラーシェアリングの実施を決断した。

2000平方メートルの耕作放棄地を借り、その半分に太陽光パネルを設置した。発電した電気は新電力のUPDATER(東京都世田谷区)を通じて城里町内の道の駅に売る。また、農薬や化学肥料を使わない有機農業を目指すことにした。温室効果ガスの抑制につながるからだ。

水戸ホーリーホックは借りた耕作放棄地で農業を始めた

借りた耕作放棄地は痩せていた。1年目の25年は土壌の栄養を復活させる緑肥となる植物を育て、一部で野菜作りを試した。2年目の26年4月、トウモロコシやジャガイモ、枝豆を植えて栽培を本格化させた。

異常気象の影響により、有機農業は難易度が上がっている。それでも「リアルと向き合わないと耕作放棄地再生の難しさを経験できず、課題解決策を示せない」(水戸ホーリーホックの瀬田取締役)とし、専門家の指導を受けながら農業に取り組む。

収穫した野菜はスタジアムなどで販売する。サッカークラブは多くのサポーターに働きかけることができる存在だ。環境や農業の問題に関心がない人にも有機農業で育てた野菜を購入するきっかけを作ることで、地域の農業の活性化に貢献できる。

本業のサッカーの成績が振るわないと、広告などで支援する企業が離れる恐れがあるのはプロサッカークラブのさが。瀬田取締役は「オフ・ザ・ピッチ(競技以外)も評価してもらい、支援し続けてもらえる価値のあるクラブにしたい」と意気込む。地域課題解決への思いが本気だから、企業に価値が伝わるはずだ。

日刊工業新聞 2026年05月06日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)について企業などからの情報発信が増えている印象があります。設置が増えるとソーラーシェアリング用の支柱やパネルのコストダウンも進むと期待しています。

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