営農型で拡販なるか、MORESCOが「有機薄膜太陽電池」に挑み続ける理由
薄くて軽く曲げられる〝もう一つ〟の次世代型太陽電池「有機薄膜太陽電池(OPV)」に長年取り組む企業がある。化学製品メーカーのMORESCO(モレスコ)だ。2010年代からOPVモジュールの製造を手がけ、これまでに宮城県南三陸町の商店街や兵庫県庁などに納入してきた。政府が「ペロブスカイト太陽電池」の導入目標を掲げたことで、薄く軽く曲げられる次世代型太陽電池の注目度は高まっている。モレスコは、薄くて軽く曲げられるだけではないOPVの特性を生かせるとして、農地に設置して発電と作物の育成を両立する「営農型」で販売拡大を図ろうとしている。
大阪・関西万博で発信
大阪市夢洲で開催中の大阪・関西万博。その西エリアの3カ所に、モレスコのOPVを使用したベンチがある。葉っぱの形をした2つのOPVで発電し、ベンチ内のバッテリーを充電する。そこからUSBを介してスマートフォンなどを充電できる仕組みだ。次世代型の再生可能エネルギー技術に取り組む企業姿勢を世界にアピールしつつ、OPVについてアプリケーション(使い方)を含めて発信している。
モレスコはOPVの販売を拡大していく上でアプリケーションを含めた提案を重視する。万博で展示しているベンチ一体化型はその一例だ。一方、そうした同社が現在、大きな期待を寄せるOPVのアプリケーションが営農型だ。OPVは薄くて軽く曲げられるため、ビニールハウスに設置できる。加えて、OPVは発電層の材料合成によって発電のために吸収する光の波長を選べる。農作物の生育に必要な波長の光は透過し、光合成への寄与が少ない波長の光で発電するようにできる。モレスコはそうした「波長選択型」のOPVについて大阪大学産業科学研究所の家裕隆教授やDICなどと共同で開発している。
NEDO事業で実用化へ
「変換効率の勝負では(同じく薄くて軽く曲げられる)ペロブスカイト太陽電池になかなか敵わないところがある。OPVの利点を生かす使い方として我々は波長選択型を重視している」。モレスコデバイス材料事業部の細岡也寸志事業部長は力を込める。波長選択型は一部の光を透過するため、一般のOPVに比べても変換効率は下がる。モジュールサイズで3%程度が目標値になるという。それでも、ビニールハウスにおける設置面積を考えれば、そこで使う電気として十分な量を発電できると見込む。もちろん、導入コストや農作物への影響との見合いになるが、農家の関心は高いという。
9月には次世代型太陽電池や設置場所に応じた太陽光発電システムなどを研究開発する新エネルギー・総合研究開発機構(NEDO)事業の採択をDICなどと受けた。29年度に向けてOPVの耐久性向上や量産プロセスの開発などを進める。実用化時期は30年をメドとしつつ、細岡事業部長は「なるべく前倒ししたい」と意気込む。
「〝ならでは〟の生きる道はある」
モレスコは11年にOPV関連の研究開発を始めた。有機ELが登場した頃で、ディスプレイや照明などのデバイスがフレキシブル化する未来が予見されていた。モレスコは加熱すると溶けて冷えると固まるホットメルト接着剤の技術を持っており、それを生かしてフレキシブルデバイスの封止材を開発しようと考えた。その供給先の一つの候補としてOPVが挙がり、評価を進めるために自らOPVを製作した。OPV自体の事業化はこの延長で、16年ごろから本格的に目指した。その後、18年にモジュールの供給を始め、納入実績を少しずつ積み重ねてきた。
一方、OPVは国内企業が10年代に事業化を目指したものの、市場は生まれなかった。現在は変換効率が急伸したペロブスカイト太陽電池に、薄く軽く曲げられる次世代型太陽電池としての注目が集まっている。それでもモレスコはOPVの取り組みを続けてきた。「(鉛を使っておらず、廃棄物も少ない)OPVはよりエコな再生可能エネルギー。“ならでは”の生きる道はある」(細岡事業部長)と考えるからだ。
「営農型」はその〝OPVならでは〟が生かせる領域だ。モレスコにとってOPV事業の試金石になる。
〝もう一つ〟の次世代太陽電池「有機薄膜」の可能性
#01 社会実装へ、研究開発プロジェクトの全容
#02 営農型に勝機あり
#03 事業者が見る勝ち筋
#04 長年取り組む理由
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